や》りました。車夫《しゃふ》は年頃|四十五六《しじゅうごろく》で小肥満《こでっぷり》とした小力《こぢから》の有りそうな男で、酒手《さかて》を請取《うけと》り荷を積み、身支度をして梶棒《かじぼう》を掴《つか》んだなり、がら/\と引出しましたが、古河から藤岡《ふじおか》までは二里|余《よ》の里程《みちのり》。船渡を出たのは二時頃で、道が悪いから藤岡を越す頃はもう日の暮れ/″\で、雨がぽつり/\と降り出しました。向うに見えるは大平山《おおひらさん》に佐野の山続きで、此方《こちら》は都賀村《つがむら》、甲村《こうむら》の高堤《たかどて》で、此の辺は何方《どちら》を見ても一円沼ばかり、其の間には葭《よし》蘆《あし》の枯葉が茂り、誠に物淋しい処でございます。車夫《しゃふ》はがら/\引いてまいりますと、積んで来た荷の中の死骸が腐ったも道理、小春なぎの暖《あたゝか》い時分に二晩《ふたばん》留《と》め、又|打《うち》かえって寒くなり、雨に当り、いきれましたゆえ、臭気|甚《はなはだ》しく、鼻を撲《う》つばかりですから、
車「フン/\、おや旦那え/\」
又「なんだ、急いで遣《や》ってくれ」
車「なんだか酷《
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