ぶね》に積み、明くれば十月三日|市川口《いちかわぐち》へまいりますと、水嵩《みずかさ》増して音高く、どうどうっと水勢《すいせい》急でございます。只今の川蒸汽《かわじょうき》とは違い、埓《らち》が明きません。市川、流山《ながれやま》、野田《のだ》、宝珠花《ほうしゅばな》と、船を附けて、関宿《せきやど》へまいり、船を止めました。尤《もっと》も積荷《つみに》が多いゆえ、捗《はか》が行《ゆ》きませんから、井生森は船中で一泊して、翌日は堺《さかい》から栗橋《くりはし》、古河《こが》へ着いたのは昼の十二時頃で、古河の船渡《ふなと》へ荷を揚《あ》げて、其処《そこ》に井上《いのうえ》と申す出船宿《でふねやど》で、中食《ちゅうじき》も出来る宿屋があります。井生森は其処へ入り、酒肴《さけさかな》を誂《あつら》え、一杯|遣《や》って居りながら考えましたが、これから先|人力《じんりき》を雇って往《ゆ》きたいが、此の宿屋から雇って貰っては、足が附いてはならんからと一人で飛出し、途中から知れん車夫《くるまや》を連れてまいり、此の荷を積んでどうか佐野まで急いでやってくれと、酒を呑ませ、飯を喰わせ、五十銭の酒手を遣《
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