ひど》く臭《くさ》いねえ、あゝ臭い」
又「なんだ」
車「何だか知んねえが誠に臭い」
と云われ、又作はぎっくりしましたが、云い紛《まぎ》らせようと思い、
又「詰《つま》らん事をいうな、此の辺は田舎道だから肥《こい》の臭《にお》いがするのは当然《あたりまえ》だわ」
車「私《わし》だって元は百姓でがんすから、肥《こい》の臭《くさ》いのは知って居りやんすが、此処《こゝ》は沼ばかりで田畑《でんぱた》はねえから肥の臭《にお》いはねえのだが、酷《ひど》く臭う」
と云いながら振り返って鼻を動かし、
車「おゝ、これこれ、此の荷だ、どうも臭いと思ったら、これが臭いのだ、あゝ此の荷だ」
と云われて又作|愈々《いよ/\》驚き、
又「何を云うのだ、なんだ篦棒《べらぼう》め、荷が臭いことが有るものか」
車「だって旦那、臭いのは此の荷に違いねえ」
又「これ/\何を云うのだ」
と云ったが最《も》う仕方がありませんから、云いくろめようと思いまして、
又「これは俗に云う干鰯《ほしか》のようなもので、田舎へ積んで往って金儲けを仕ようと思うのだ、実は肥《こい》になるものよ」
車「肥《こい》の臭《にお》いか干鰯の臭いか
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