床《いかりどこ》と云って西洋床をして居りました時、此方《こちら》の二階のお客に旧弊頭《きゅうへいあたま》もありますので、時々お二階へ廻りに来た文吉という髪結《かみゆい》でございます」
丈「はアお前が文吉さんか、誠に久しく逢いませんでした」
文「先々月の二日清水の旦那が此方《こちら》へお泊りなすって、荷物をお預け申して湯に入《は》いるって錨床へ入《い》らしったところが、私《わっち》が上州を廻っている時分御厄介になった清水の旦那だから、何御用でというと金を持って仕入れに来たが、泊る所に馴染《なじみ》がねえから、春見屋へ泊ったと仰《おっ》しゃったから、それはとんでもねえ処へ、いえなに宜《よ》い処へお泊りなすったという訳でねえ」
丈「一寸《ちょっと》お出《い》でにはなったが、取急ぎ横浜へ往《ゆ》くと云ってお帰りになった」
文「もし先々月の二日でございますぜ」
丈「左様《そう》よ」
文「あの清水の旦那が金を沢山《どっさり》春見屋へ預けたと仰しゃるから、それはとんだ処へ、いえなにどうも誠にどうもねえ」
丈「来たことは来たが、お連《つれ》か何か有ると見え、いくら留《と》めても聞入れず、買出しの事|故
前へ 次へ
全151ページ中30ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング