うも見違えるように大きくおなりだねえ、今女どもが取次をしたが、新参で何も心得んものだから知らんが、お父《とっ》さんは前々月《せん/\げつ》の二日に一寸《ちょっと》私の所へお出《い》でになったよ」
重「左様でございますか、先刻《せんこく》お女中が此方《こちら》へ来《き》ねえと云いましたから、はてなと思いやしたのは、宅《うち》を出る時は春見様へ泊り、遅くも十一月の末には帰ると云いましたのが、十二月になっても便《たよ》りがありやせんから、母も心配して、見て来るが宜《い》いというので、私《わし》が出て参りまして」
丈「成程、だが今云う通り一寸《ちょっと》お出でになり、どう云う訳だか取急ぎ、横浜へ買出しに往《ゆ》くと云って、直《す》ぐ往《ゆ》こうとなさるから、久振《ひさしぶり》で逢って懐かしいから、今晩一泊なすって緩々《ゆる/\》お話もしたいと留《と》めても聞入れず、振り切って横浜へいらしったが、それっ切り未《ま》だお宅《たく》へ帰らんかえ」
重「へい、そんなら親父《おやじ》は来たことは来たが、此方《こちら》には居ねえんですか困ったのう、文吉どん」
文「もし旦那、御免なせえ、私《わっち》は元|錨
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