々月お出でなすって、春見屋へ宿をお取んなすったようで」
重「宅《うち》へもそう云って出たのだが、余《あんま》り音信《おとずれ》がないから何処《どこ》へ往ったかと思っているんだよ」
文「なに春見屋で来《こ》ねえって、そんな事はありやせん、前々月《せん/\げつ》の二日の日暮方《ひくれかた》、私《わっち》は海老床《えびどこ》という西洋床を持って居りますが、其処《そこ》へ旦那がお出《い》でなすったから、久し振でお目にかゝり、何処《どこ》へお宿をお取りなさいましたと云うと、春見屋へ宿を取り、買出しをしに来たと仰しゃるから、それはとんでもない事をなすった、あれは身代限《しんだいかぎり》になり掛っていてお客の金などを使い込み、太《ふて》い奴でございます、大きな野台骨《やたいぼね》を張っては居りますが、月給を払わないもんだから奉公人も追々《おい/\》減ってしまい、蕎麦屋でも、魚屋でも勘定をしねえから寄附《よりつ》く者はねえので、とんだ所へお泊りなすったと云うと、旦那が権幕《けんまく》を変えて、駈け出してお出《い》でなさったが、それ切りお帰りなさらないかえ」
重「国を出た切り帰《けえ》らねえから心配《し
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