二階には多人数《たにんず》のお客が居りますから、女中はばた/\廊下を駆《か》けて居ります。
重「御免なせい/\、/\」
女「はい入らっしゃいまし、まア此方《こちら》へお上《あが》んなさいまし」
重「春見丈助様のお宅は此方でございやすか」
女「はい春見屋は手前でございますが、何方《どちら》から入《いら》っしゃいました」
重「ひえ、私《わし》は前橋竪町の清水助右衞門の忰《せがれ》でござりやすが、親父《おやじ》が十月国を出て、慥《たし》か此方《こちら》へ着きやんした訳になって居りやんすがいまだに何《なん》の便《たよ》りもございませんから、心配して尋ねてまいりましたが、塩梅《あんべい》でも悪くはないかと、案じて様子を聞きにまいりましたのでがんすと云って、どうかお取次を願いていもんです」
女「左様でございますか、少々お控えを願います」
と奥へ入り、暫《しばら》くして出てまいり。
女「お前さんねえ、只今|仰《おっ》しゃった事を主人へ申しましたら、そう云うお方は此方《こちら》へはいらっしゃいませんが、門違《かどちが》いではないかとの事でございますよ」
重「なんでも此方へ来ると云って家《うち》を出や
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