ごようだ》てますが、今は命より大事の三千円の金だからそれを返して下さらなけりゃア国へ帰《けえ》れません」
と云うので、一生懸命に袖へ縋られた時には、是は自分の身代の傾いた事を誰かに聞いたのだろう、罪な事だが是非に及ばん、今此の三千円が有ったら元の春見丈助になれるだろうと、有合《ありあわ》せた槻《けやき》の定木《じょうぎ》を取って突然《いきなり》振向くとたんに、助右衞門の禿《は》げた頭をポオンと打ったから、頭が打割《ぶちわ》れて、血は八方へ散乱いたして只《たっ》た一打《ひとうち》でぶる/\と身を振わせて倒れますと、井生森又作は酷《ひど》い奴で、人を殺して居る騒ぎの中で血だらけの側にありました、三千円の預り証文をちょろりと懐《ふところ》へ入れると云う。これがお話の発端でございます。
二[#底本では脱落]
清水助右衞門は髪結《かみゆい》文吉の言葉を聞き、顔色変えて取ってかえし、三千両[#「三千円」の誤記か]の預り証書を春見の前へ突き出し、返してくれろと急の催促に、丈助は其の中《うち》已《すで》に百円使い込んで居《い》るから、あとの金は残らず返すから、これだけ待ってくれろと云
前へ
次へ
全151ページ中22ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング