証書とお引換《ひきかえ》にお渡しを願います」
 と紙入から書付を出して春見の前へ突付けて。
助「どうか三千円お戻しを願います」
丈「それは宜《い》いが、まア慌てちゃいけん、横浜あたりへ往って、あの狡猾世界《こうかつせかい》でうか/\三千円の物を買えば屹度《きっと》損をするから、慌てずにそういう物があるか知らぬけれども、是から往って物を見て値を付けて、そこで其の内を五百円買うとか二百円買うとか仕なければ、固《もと》より慣れぬ商売の事だから、慌てちゃアいかん、何ういう訳だかまア緩《ゆっく》りと昔話も仕たいから、まア泊《とま》んなさい」
又「只今主人の申します通り、横浜は狡猾な人の多く居ります所だから、損をするのは極《きま》って居りますゆえ、三千円一度に持って往って損をするといけないから、まア/\今晩は緩《ゆる》りとお泊りなさいまし、して明日《みょうにち》十二時頃からお出《い》でなすって、品物を見定めて、金子も一時《いちじ》に渡さずに、徐々《そろ/\》持って往って、追々とお買出しをなすった方が宜しゅうございます」
助「それは御尤様《ごもっともさま》でございますが、親切な確かな人に聞いた事でご
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