助「そりゃア知んねえからなア」
文「何か預けた物がありますか」
助「有るって無《ね》えって、命と釣替《つりげえ》の」
と云いながら出に掛ったが、玻璃《がらす》でトーンと頭を打《ぶっ》つけて、慌《あわ》てるから表へ出られやしません。
文「玻璃戸が閉っていて外が見えても出られませんよ、怪我《けが》をするといけませんよ」
助「なに此の儘《まゝ》では居《い》られない」
と云うので取って返して来て、がらりと明けて中へ這入って。
助「御免なせえまし」
と土間から飛上って来て見ると、其処《そこ》らに誰も居りませんから、つか/\と奥へ往《ゆ》きますと、奥で二人で灯火《あかり》を点《つ》けて酒を飲んでいたが、此方《こちら》も驚いて。
丈「やアお帰りか」
助「先刻《さっき》お預け申しました三千円の金を、たった今|直《す》ぐにお返しを願います」
と云うから番頭驚いて。
又「あなたは髪も結わず、湯にもお入りなさらんで何うなさいました」
助「髪も湯も入りません、今横浜に安い物が有るから、今晩の中《うち》に往って居《お》らなければならんから、直ぐに行《ゆ》くから、どうか只今お預け申しました鞄《かばん》を
前へ
次へ
全151ページ中18ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング