ずみ》くだされ」
 と血に塗《まみ》れたる両手を合《あわ》せ、涙ながらに頼みます恩愛の情《じょう》の切《せつ》なるに、重二郎と清次と顔を見合わせて暫《しばら》く黙然《もくねん》といたして居りますと、蔵の外より娘のおいさが、網戸を叩《たゝ》きまして、
い「申し、清次さん、此所《こゝ》開《あ》けて下さいまし」
清「おゝ誰だえ」
い「はい、いさでござります、どうぞ開けて、死目《しにめ》に一度逢わせてください」
 というから、清次は慌てゝ戸を開けますと、おいさは転《ころ》げ込んで父の膝に縋《すが》り付き、泣倒《なきたお》れまして、
い「もうしお父様《とっさま》、お情《なさけ》ない事になりました、生《うみ》の親より深い御恩を受けました上、斯《こ》ういう事になりましたも皆《み》な私《わたくし》を思召《おぼしめ》しての事でございますから、皆様《みなさん》どうぞ代りに私を殺して、お父様をお助けなされて下さいまし」
 と嘆《なげ》く娘を丈助は押留《おしとゞ》め。
丈「あゝこれ、お前を殺すくらいなら、彼《あ》の様《よう》な悪い事はいたさぬわい、只今も願う如く、予《かね》てお前の望みの通り重二郎殿と末長《す
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