事はありません」
重「それは些《ち》とお言葉が違いましょう、私《わし》が七年|前《あと》に親父《おやじ》を捜しに来た時、成程清水助右衞門が来たと云った事があるが、貴方《あんた》はお侍さんにも似合いませんねえ」
丈「成程それは来ました、さア来ましたが、直《すぐ》に横浜へ往《ゆ》くと云うから、まア一晩泊ったら宜《よ》かろうと云ったが聞き入れず、直《すぐ》に出て往《ゆ》きなすって泊りはせんと云いました」
重「それだからさ」
清「まア黙ってお出《い》でなせえ、旦那え、今三千円の金があれば清水の家も元のように立ちやす、そうすれば貴方《あなた》も寝覚《ねざめ》がいゝから、どうか返して下せえ、親子三人、浮《うか》び上《あが》ります」
丈「浮び上るか沈んでしまうか知りませんが、七年|前《あと》預けたものを今まで取りに来ない筈《はず》はありますまい、殊《こと》に十円や廿円の金じゃアなし、三千円という大金ではないか」
清「旦那静かになせえ証拠のないものは取りに来ません、三千円確かに預かった、入用《にゅうよう》の時は何時《なんどき》でも返《け》えそうという証書があります」
丈「なに証書がある、証書があれば見
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