い、段々旦那も身代が悪くなって、商法を始めるのに就《つ》いて高利を借り三千円の金を持って東京へ買出《かいだ》しに出て来て、馴染《なじみ》の宿屋もねえ事ですから、元前橋で御重役をなすった貴方《あなた》が、東京へ宿屋を出してお在《いで》なさるから、彼方《あそこ》へ行って金を預けて買出しをすれば大丈夫だと、宅《うち》へ云置《いいお》いて出て来た儘《まゝ》帰って来《こ》ねえで、素《もと》より家蔵《いえくら》を抵当にして借りた高利だから、借財方《しゃくざいかた》から責められ、重さんのお母《っか》さんが心配して眼が潰《つぶ》れて見る影もねえ御難渋《ごなんじゅう》、私《わっち》も見かねて貴方《あなた》へ預けた金を取りに来やした、預けたに違《ちげ》えねえ三千円、元は大小を挿《さ》した立派な貴方、開化になっても士族さんは士族さん、殊《こと》にこれだけの身代で、預ったものを預からないと云っては御名義にも係わりますから、旦那、返《けえ》して遣《や》って下せえな」
丈「お黙んなさい、預かった覚えは毛頭ありません、何を証拠に三千円の金を、私が何《な》んで預りましょう、殊《こと》に七年あと清水さんが私の所へ参った
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