》をこぼして、
い「重さん、私《わたくし》は不意気《ぶいき》ものでございますから、貴方《あなた》に嫌われるのは当前《あたりまえ》でございますが、たとえ十年でも二十年でも亭主はもつまい、女房《にょうぼ》はもたないと云い交《かわ》せましたから、真実そうと思って楽《たのし》んで居りましたのに、貴方がそう仰《おっ》しゃれば私《わたくし》は死んでしまいますが、万一《ひょっと》許嫁《いゝなずけ》の内儀《おかみ》さんでも田舎から東京へ出て来てそれを女房になさるなら、それで宜《よろ》しゅうございますから、私は女房になれないまでも御飯炊《ごぜんたき》にでも遣《つか》ってあなたのお側にお置きなすって下さいまし」
重「勿体《もったい》ない、御飯炊《ごぜんたき》どころではないが云うに云われない訳があって、あんたを女房《にょうぼ》にする事は出来ません、私《わし》もお前さんのような実意《じつい》のあるものを女房にしたいと思って居りましたが、訳があってそう云うわけに出来ないから、どうか私が事は思い切り、良《い》い亭主を持って、死ぬのなんのと云うような心を出さないで下さい、お前さんが死ぬと云えば私も死なゝければならな
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