重「此間《こないだ》貰った十円の金と指環《ゆびわ》はあなたへお返し申しますから、お受け取りなすって下さいまし」
い「あれ、折角お母様《っかさま》に上げたいと思って上げたのに、お返しなさるって、そうして指環も返そうと仰《おっ》しゃるのは、貴方《あなた》お気に入らないのでございますか」
重「此間《こないだ》も云う通り、釣合《つりあ》わぬは不縁《ふえん》の元《もと》、零落果《おちぶれは》てた此の重二郎、が貴方《あなた》と釣合うような身代になるのはいつの事だか知れません、あなたがそれまで亭主を持たずには居《お》られますめえし、私《わし》だっても年頃になれば女房《にょうぼ》を持たねえ訳にはいきません、此間《こないだ》あんたが嬉しい事を云ったから女房にしようと約束はしたが、まだ同衾《ひとつね》をしねえのが仕合《しあわ》せだから、どうか貴方《あんた》はいゝ所から婿を取って夫婦|中《なか》よくお暮しなすって、私《わし》が事はふッつりと思い切って下さらないと困る事がありますから、何卒《どうか》思い切って下さい、よう/\」
い「はい/\」
 と云って重二郎の顔を見詰めて居りましたが、ぽろりと膝へ泪《なみだ
前へ 次へ
全151ページ中128ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング