ましたが、此の時隣りの明店《あきだな》にいた清次は大《おお》いに驚き、まご/\しては焼け死ぬから、兎も角も眼の悪い重二郎のお母《ふくろ》に怪我《けが》があってはならんと、明店を飛出《とびだ》す、是から大騒動《おおそうどう》のお話に相成ります。

     七

 西洋の人情話の作意《さくい》はどうも奥深いもので、証拠になるべき書付《かきつけ》を焼捨《やきす》てようと思って火を放《つ》けると、其の為に大切の書付が出るようになって居りますが、実に面白く念の入りました事で、前回に申上げました通り、春見丈助は井生森又作を縊《くび》り殺して、死骸の上に木片《こっぱ》を積み、石炭油《せきたんゆ》を注《つ》ぎ掛けて火を放《つ》けて逃げますと云うのは、極悪非道な奴で、火は一面に死骸へ燃え付きましたから、隣りの明店《あきだな》に隠れて居りました江戸屋の清次は驚きましたが、通常《あたりまえ》の者ならば仰天《ぎょうてん》して逃げ途《ど》を失いますが、そこが家根屋《やねや》で火事には慣れて居りますから飛出《とびだ》しまして、同じ長家《ながや》に居《い》る重二郎の母を助《す》けようと思ったが、否々《いや/\》先
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