り。
又「大《おお》きに御苦労、平常《ふだん》己《おれ》が借りがあるものだから、番頭めぐず/\云やアがったが、今日は金を見せたもんだから、直《す》ぐよこしやアがった、肴《さかな》も序《つい》でに御用に持たして来たよ、大きに御苦労だった、毎《いつ》もは借りるが今日は現金だ、番頭に宜《よ》く云ってくんな」
 と云いながら上へ上《あが》り、是から四方山《よもやま》の話を致しながら、春見は又作に盞《さかずき》を差し、自分は飲んだふりをして、あけては差すゆえ、又作はずぶろくに酔《え》いました。
又「大《おお》きに酩酊《めいてい》致した、あゝ好《い》い心持《こころもち》だ、ひどく酔《よ》った」
春「君、僕も酩酊致したから最《も》う立ち帰るよ、千円の金は宜《よろ》しいかえ、確《たしか》に渡したよ」
又「宜しい、金は死んでも離さない、宜しい、大丈夫心配したもうな」
春「それじゃア締りを頼むよ」
 と云うと、又作は横に倒れるを見て、春見は煎餅《せんべい》のような薄っぺらな損料蒲団《そんりょうぶとん》を掛けて遣《や》る中《うち》に、又作はぐう/\と巨蟒《うわばみ》のような高鼾《たかいびき》で前後も知らず、
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