御散財《ごさんざい》だねえ千円の金を持って来た上で肴代《さかなだい》を出すとは、悪事をした報《むく》いだ」
と云いながら出て往《ゆ》く、跡にて春見は家内《かない》を残らず探したが知れません。何処《どこ》へ隠したか、何処へ置いて来たか、穴でも掘って埋《い》けてあるのではないか、床下《ゆかした》にでも有りはしないか、何しろ彼奴《あいつ》の手に証書を持たして置いては、千円|遣《や》っても保《たも》つ金ではない、遣《つか》い果して又後日ねだりに来るに違いない、是が人の耳になれば遂《つい》に悪事|露顕《ろけん》の原《もと》だから、罪なようだが、彼奴を殺してしまい此家《こゝ》へ火を放《つ》け、証書も共に焼いてしまうより外《ほか》に仕様がない、又作を縊《くび》り殺し、此の家《うち》へ火を放《つ》ければ、又作は酒の上で喰い倒れて、独身者《ひとりもの》ゆえ無性《ぶしょう》にして火事を出して焼死《やけし》んだと、世間の人も思うだろうから、今宵《こよい》又作を殺して此の家《や》へ火を放《つ》けようと、悪心も増長いたしましたもので、春見は思い謀《はか》って居りますところへ、又作が酒屋の御用を連れて帰ってまい
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