汁《つゆ》が入っているという、本当に好《よ》くしても売れねえ、斯《こ》ういう訳で、あの寒い橋の袂《たもと》でこれを売って其の日を送るまでさ、旧時《むかし》は少々たりとも禄《ろく》を食《は》んだものが、時節とは云いながら、残念に心得て居ります、処へ君に廻《めぐ》り逢って大《おお》きに力を得た、其の千円で取附《とりつ》くよ」
春「千円は持って来たが、三千円の預り証書と引替に仕ようじゃないか」
又「よく預り証書/\と云うなア」
春「隠してもいかん、助右衞門を打殺《ぶちころ》して旅荷に拵《こしら》えようとする時に、君が着服したに相違ない、隠さずに出したまえ」
又「有っても無くても兎《と》も角《かく》も金を見ねえうちは証文も出ない訳さ」
春「そんなら」
 と云いながら懐《ふところ》からずっくり取出すと。
又「有難《ありがて》え、えーおー有難《ありがて》い、是だけが僕の命の綱だ」
春「此間《こないだ》は何を云うにも往来中《おうらいなか》で、委《くわ》しい話も出来なかったが、助右衞門の死骸はどうしたえ」
又「お宅《たく》から船へ積んで深川扇橋へ持って往《ゆ》き、猿田船《やえんだぶね》へ載せ、僕が上乗
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