のお方でがんすえ」
女「いえ、春見のお嬢様でございますが、一寸《ちょっと》お目にかゝりお詫《わ》び事《ごと》をしたいと仰しゃってゞすが、お手間は取らせませんから、ちょっと此の二階へお上《あが》んなさいましよ」
重「先達《さきだっ》ては御恵《おめぐ》みを受け、碌々《ろく/\》お礼も申上げやせんでしたが、今日は少々急ぎますから」
と云いながら往《ゆ》きにかゝるを引き留め。
女「お急ぎでもございましょうが、まアいらっしゃいまし」
と無理に手を取って、宮松の二階へ引上げました、重二郎も三円貰った恩義がありますから、礼を云おうと思ってまいりました。
女「此方《こちら》へお這入《はい》んなさいまし」
と云われ重二郎は奥の小座敷へ這入ると、文金《ぶんきん》の高髷《たかまげ》に唐土手《もろこしで》の黄八丈《きはちじょう》の小袖《こそで》で、黒縮緬《くろちりめん》に小さい紋の付いた羽織を着た、人品《じんぴん》のいゝ拵《こしら》えで、美くしいと世間の評判娘、年は十八だが、世間知らずのうぶな娘が、恥かしそうにちょい/\と重二郎の顔を見ては下を俯《む》いて居まして、
いさ「此方《こちら》へお這入り遊ばし
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