藁草履は私《わっち》の処が一番安いのでございます、有難う誠に何うも、其処へ行くんですが、ちょいと銭を箱の中へ放り込んで一帖持って行って下さいまし、札が附いてますから間違えは有りません」
武「なに貴様は余程酒が嗜《す》きだな、私《わし》が此処《こゝ》を通る度《たび》に飲んで居《お》らん事はないが、貴様は余程《よっぽど》酒家《しゅか》だのう」
喜「ヘイ嗜きです、お寒くなると朝から酒を飲まねえと気が済みませんな」
武「酒家《さけのみ》は妙なものだな、酒屋の前を通ってぷーんと酒の香《におい》が致すと飲み度《た》くなる、私《わし》も同じく極《ごく》嗜《すき》だが、貴様が飲んで居《い》る処を見ると何となく羨《うらやま》しくなる」
喜「え、殿様もお嗜きで、極《ごく》好《い》い酒が有ります、私《わっち》ゃア番太郎ですが江戸ッ子の番太郎は余り無《ね》えんです、極好い酒が有りますから、誠に失礼ですが一つ召上れ」
武「それは辱《かたじけな》いなア」
梅「あらまア御免遊ばせ酔って居りますから、お前さん何と云う事だよ、お武家様を番太郎の家《うち》などへお上げ申す事が出来ますものかね」
喜「いや嗜き
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