りますから、網を張って待って居た処へ、あの侍が来たというので一時《いちどき》に取押えましたから、まア容易《たやす》く縄に掛けて会所へ廻し、此の度《たび》御奉行様の御厄介に成りましたどうか何分宜しくお願い申します」
豊「うむ、浪人下河原清左衞門」
清「はゝア」
と残念そうな顔をしてずっと首を擡《あ》げました。
豐「其の方は何歳だ」
清「四十九歳に相成ります、へえ…」
豐「昨年十一月三日八ツ半|時《どき》と申す事じゃが、番人喜助方へ参って小さい徳利《とくり》を持ち銘酒だと云って喜助に毒を飲ませたに相違あるまい、真直《まっすぐ》に白状致せ」
清「恐れながら手前毛頭覚えがございません、はい何故《なにゆえ》に毒を盛りましょうか、何等《なんら》の人違いか、頓と解りません、侍でござる、仮令《たとえ》浪人しても汚名は厭《いと》います事で、如何にも残念に心得まする、何故|斯様《かよう》な事を申すか頓と相解りません、神に誓い決して人を毒殺いたすなどゝいうは毛頭覚えのない事、御推察下さるように」
豐「其の方|何様《いかよう》に陳じても、是なる遊女紅梅は貞節なる心から致して夫《おっと》の敵が討
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