《かたき》を強いお上《かみ》に取って貰わなければならないから、何うぞ私《わたくし》を吉原へ女郎に売って下さい、格子先へ立つ人の中にあの武家に似た人が有ったら騙《だま》して捕まえて亭主の敵を討つ」
 と云い張り、幾ら留めても肯《き》かず遂に江戸町《えどちょう》一丁目|辨天屋《べんてんや》の抱えと成って名を紅梅《こうばい》と改め、彼《か》の武士《さむらい》の行方を探すと云う亭主の敵討《かたきうち》の端緒でございます。

        二

 今日《こんにち》の処は、長谷川町の番人喜助の続きとお話が二途《ふたみち》に分れますが、後《のち》に一つ道に成る其の前文でありますからお聴き悪《にく》い事でございましょう、扨《さて》築地《つきじ》の本郷町《ほんごうちょう》と小田原町《おだわらちょう》、柳原町《やなぎはらちょう》と町内が繋《つな》がって居りますが、小田原町の家主《やぬし》に金兵衞と申す者がございまして、其の頃は家号《いえな》を申して近江屋《おうみや》の金兵衞と云う処から近金《ちかきん》と云われます、年齢《とし》は四十二に成りますが、真実な人で、女房をお蓮《れん》と云って三十八に成ります、
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