て顔色《かおいろ》を変え、袴の間へギュッと手を入れて肩を張らし、曲淵甲州公の顔を眤《じっ》と見詰めて居りましたが、
 園「是は怪《け》しからん仰せにござります、長谷川町の番人に毒酒を与えましたなどと云うは毛頭覚えない事でございます、怪《けし》からんお尋ねを蒙るもので」
 甲「控えろ、其の方|如何様《いかよう》に陳じても天命は遁《のが》れ難い事で有る、其の方は監物の妾|村《むら》と申す者と密通致し、村の腹へ宿したる鐵之丞を家督に直さんが為に、本腹の金之丞へ毒薬を授け金之丞を毒殺致して妾の腹に出来たる鐵之丞を家督に直さんという企《たくみ》を致した事は上に於て篤と調べが届いて居《お》るぞ」
 園「是は何うも思い掛けないお尋ねを蒙りますもので何故《なにゆえ》に左様な事を」
 甲「黙れ、其の方如何様に陳じてももう遁れる道はないわ、辨天屋祐三郎抱え紅梅を呼出《よびいだ》せ」
 是から紅梅が出て来ましたが娼妓などは立派に着飾って出るもので、お白洲に出るような姿ではない。前《ぜん》申し上げます通り阿古屋《あこや》の琴責《ことぜめ》の様な姿で簪《かんざし》を後光の様に差《さし》かざして居《い》るから年を
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