方が口外致せば故主《こしゅ》の非を挙《あぐ》る事になるかもしれんが、筆の孝心より申すのじゃ仔細はない、控えて居れ、ふむ、主家の妾の腹に宿した子が有ったと」
筆「はい、お妾の腹に出来ました鐵之丞《てつのじょう》と申します者を世に出《い》だそうというお妾の悪計《たくみ》に附きました者もございまして、御本腹の金之丞《きんのじょう》様を毒害しようと云う悪計もございましたと云う事は薄々聞きました事で」
甲「うむ、其の方に叔父が有るか」
筆「はい、ございます」
甲「是なる清左衞門の兄で有るか弟か」
筆「弟でございます」
甲「うむ、それはまだ監物の屋敷に居《お》るか」
筆「未だ居《お》るでございましょう」
甲「吉田監物家来下河原清左衞門、其の方は武士道が立難いに依って身体の醢《ひしびしお》になり骨が砕けても云わんと申したが娘が親を助け度《た》いと云う孝心から此の事を申したのじゃから其の方に於《おい》て武士道の立たんと申す事は聊《いさゝか》もない、筆、叔父の名は園八郎《そのはちろう》と申すで有ろうの」
筆「はい園八郎と申します」
甲「能く申した今日《こんにち》は此の儘下げ遣わす、こ
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