います様だが、何ういう理由《わけ》かあの金子《きんす》をお上では不正金だって、三星の刻印が打って有るなどと申しますが」
 武「うむ、彼金《あれ》は芝赤羽根の中根兵藏方の家尻を切って盗んだのが丁度十二月十二日の晩でね、八百両取ったんだ」
 藤「へえー、其の盗賊が知れませんので」
 武「いや其金《それ》を取った賊は拙者だ」
 藤「えへゝゝ御冗談を、えへゝゝ」
 武「いや全くだ、何うも、悪い事を誰も知らん者は無い、賊を働くは悪い事で天道に背くとは思いながら、知りつゝ此の賊になるもねお家主、是は皆|前生《ぜんせい》の約束事かと思う、悪いから止《や》めようとしても止められんね、これは妙なもので、十四の時から私《わし》は盗賊を為《し》ます」
 藤「えへゝゝ御冗談ばかり」
 武「いや冗談じゃアない、実は中国の浪士で両親共|逝去《なく》なって伯母の手許に厄介に成って居《お》ったが十四歳から賊心を発《おこ》して家出をなし長い間賊を働いて居ったが是まで知れずに居ったのだがね」
 藤「へえー全く殿様が」
 武「あい、何うも止めようと思っても止められんものだね、私《わし》が取った金を遣ったんだと斯《こ》う云っ
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