誤記]さんお前さん一寸《ちょっと》御挨拶を」
 武「はいお父《とっ》さんか始《はじめ》てお目に懸ったが実は日外《いつぞや》私《わし》が数寄屋河岸を通り掛るとお前の娘子が私《わたくし》も親の病中其の日に困り親共には内々《ない/\》で斯様《かよう》な処へ出て袖乞をすると言って涙を溢《こぼ》して袖に縋られ、誠に孝行な事と感服して聊《いさゝ》か恵みをしたのが却《かえ》って害に成って、不図《とんだ》災難を被《き》せて気の毒で有ったが、明日《あす》私が訴えて娘子は屹度《きっと》帰れる様にして上げるが、名前も明さずに金子《かね》を遣った処は誠に済まんが、明日は早々にお筆さんの帰れる様にして上げるから、金子を遣って苦労をかけた段は免《ゆる》して下さい」
 藤「何う致しまして、有難い事で、お礼を云いなよ、殿様が下さったんだから心配はない」
 孫「はい、誠に有難う、心の中《うち》で私《わたくし》は一生懸命に観音を信心致しました、どうも昨夜《ゆうべ》貴方少しうと/\致しまして夢を見て、観音様が私の枕辺《まくらべ》に立って、助けて遣るぞ助けて遣るぞと仰しゃいました、目が覚めますと矢張り宅《うち》に寝て居ったの
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