やまくん》何《ど》うか過日《くわじつ》は何《ど》うも僕《ぼく》が酷《えら》く酔《よ》うた、前後忘却《ぜんごばうきやく》といふのは彼《あ》の事かい、下宿《げしゆく》へ帰《かへ》つて翌日の十時|過《すぎ》まで熟睡《じゆくすゐ》をして了《しま》うたがアノ様《やう》に能《よ》う寝《ね》た事は余《あま》り無いよ、君《きみ》はあれから奥州《あうしう》の塩竈《しほがま》まで行《い》つたか、相変《あひかは》らず心に懸《か》けられて書面《しよめん》を贈《おく》られて誠に辱《かたじ》けない、丁度《ちやうど》宴会《えんくわい》の折《をり》君《きみ》の書状《しよじやう》が届《とゞ》いたから、披《ひら》く間《ま》遅《おそ》しと開封《かいふう》して読上《よみあ》げた所が、皆《みんな》感服《かんぷく》をしたよ、何《ど》うも杉山《すぎやま》は豪《えら》い者ぢやの、何《ど》うも此《この》行文《かうぶん》簡単《かんたん》にして其《そ》の意味深く僕等《ぼくら》の遠く及《およ》ぶ処《ところ》ではない、斯《か》う云《い》つて皆《みな》誉《ほ》めて居《を》つたぜ、跡《あと》の方《ほう》に松嶋《まつしま》の詩があつたの
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松嶋烟波碧海流《しようとうのえんぱへきかいのながれ》  |瑞岩東畔命[#二]軽舟[#一]《ずゐがんとうはんめいずけいしうを》
|潮通[#二]靺鞨[#一]三千里《しほつうずまつかつにさんぜんり》  |雲接[#二]蓬莱[#一]《くもせつすほうらい》七十|洲《しう》
|一洗心身清[#レ]従[#レ]水《いつせんしんしんきよくよりももみづ》  |平[#二]分世界[#一]総如[#レ]浮《へいぶんしてせかいをすべてごとしうかぶ》
薫風忽送他山雨《くんぷうたちまちをくるたざんのあめ》  |隔[#レ]岸楼台鎖[#二]暮秋[#一]《へだつるきしをろうだいとざすぼしうを》
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とは何《ど》うも能《よ》く出来《でけ》た、夫《それ》はさうと君は大層《たいそう》好《よ》い衣服《きもの》を買《か》うたな、何所《どこ》で買《か》うた、ナニ柳原《やなぎはら》で八十五|銭《せん》、安いの、何《ど》うも是《これ》は色気《いろけ》が好《よ》いの本当《ほんたう》に君《きみ》は何《なに》を着ても能《よ》う似合《にあ》ふぞ実《じつ》に好男子《かうだんし》ぢや、彼《あ》の湯嶋《ゆしま》の天神社内《
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