煮て持って来ておくんなすったよ、お久さんが来たよ」
 豐「あい」
 とお久と云う声を聞くと、こくり起上って手を膝について、お久の顔を見詰めて居ります。
 久「お師匠さんいけませんね、お母《っか》さんがお見舞に上るのですが、つい店が明けられませんで、些《ちっ》とはお快《よろし》ゅうございますか」
 豐「はい、お久さん度々《たび/″\》御親切に有難うございます。お久さん、お前と私とは何《な》んだえ」
 新「何を詰らない事を云うのだよ」
 豐「黙っておいでなさい、お前の知った事じゃアない、お久さんに云いたい事があるのだよ、お久さん私とお前とは弟子師匠の間じゃアないか、何故お見舞にお出でゞない」
 新「何を云うのだよ、お久さんは毎日お見舞に来たり、何《ど》うかすると日に二度ぐらいも来るのに」
 豐「黙っておいで、其様《そんな》にお久さんの贔屓《ひいき》ばかりおしでない、それは私が斯《こ》うしているから案じられて来るのじゃア無い、お久さんはお前の顔を見たいから度々来るので」
 新「仕様がないナ詰らぬ事を云って、お久さん堪忍してね、師匠は逆上して居るのだから」
 久「誠にいけませんね」
 とお久は
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