か位のお世辞は云わなければならないやね、それも家の為だと思うから云おうじゃアないか、あれサ仕様がないね、別に何も……此の間も見舞物を持って来たから台所へ行って葢物《ふたもの》を明けて返す、あれサそれを、あゝいう分らぬ事を云う仕様がねえなア」
 とこぼして居る所へ這入って来たのは何も知らないお久でございます。何か三組《みつぐみ》の葢物へおいしいものを入れて、
 久「新吉さん、今日《こんにち》は」
 新「ヘエ、お出《いで》なさい、此方《こちら》へお這入りなすって、ヘエ有難う、まア大きに落付《おちつき》ました様で」
 久「あのお母《っか》さんが上《あが》るのですが、つい店が明けられませんで御無沙汰を致しますが、慥《たし》かお師匠さんがお好《すき》でございますから、よくは出来ませんが何卒《どうぞ》召上って」
 新「有難うございます、毎度お前さんの処から心にかけて持って来て下すって有難う、錦手《にしきで》の佳《い》い葢物ですね、是は師匠が大好《だいすき》でげす、煎豆腐《いりどうふ》の中へ鶏卵《たまご》が入って黄色くなったの、誠に有難う、師匠が大好、おい師匠/\あのねお久さんの処からお前の好な物を
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