う大事な娘だのに、そんな訳もない事を云って疵《きず》を附けては、向《むこう》の親父さんの耳にでも入ると悪いやね、あの娘のお母《っか》さんは継母で喧《やかま》しいから可愛《かわい》そうだわね」
豐「可愛そうでございましょう、お前はお久さんの事ばかりかわいそうで案じられるだろうが、私が死んでもお前は可愛そうだと思う気遣《きづかい》はないよ」
新「あ、あゝいう事を、お前仕様がないね、よく考えて御覧な、全体私は家《うち》の者じゃアないか、仮令《たとえ》訳があっても隠すが当然だろう、それを訳のない者を疑って、ある/\と云うと、世間の人まで有ると思って私が困るよ」
豐「御尤《ごもっとも》でございますよ、でも何《ど》うせあるのはあるのだね、私が死ねば添われるから、何卒《どうぞ》添わして上げたいから云うのだよ、新吉さん本当に私は因果だよ、私は何うも死切れないよ」
新「あゝ云う事を云う、何を証拠に…えゝそれはね……彼様《あん》な事を…又あゝいう事を……お前そう疑るからいけない、此の頃来たお弟子ではなし、家《うち》の為になるからそれはお前、お天気がいゝとか、寒うございますとか、芝居へおいでなすった
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