《ひ》いたようだよ」
 豐「嘘をお吐《つ》きよ、私は鏡で毎日見て居るよ、お前は口と心と違って居るよ」
 新「なに違うものか、私は心配して居るのだ」
 豐「あゝもう私は早く死度い」
 新「お廃《よ》しよ、死《しに》たい/\って気がひけるじゃアないか、些《ちっ》とは看病する身になって御覧、何《なん》だってそんなに死度いのだえ」
 豐「私が早く死んだら、お前の真底《しんそこ》から惚れているお久さんとも逢われるだろうと思うからサ」

        十七

 新「あゝいう事を云う、お前は何《なん》ぞと云うとお久さんを疑《うたぐ》って、ばんごと云うがね、私とお久さんと何か訳があると思って居るのかえ」
 豐「それはないわね」
 新「ないものを兎や角云わなくっても宜《い》いじゃアないか」
 豐「ないからったっても、私と云うものがあるから、お前が惚れているという事を、口にも出さず、情夫《いろ》にもなれぬと思うと、私は本当に気の毒だから私は早く死んで上げて、そうして二人を夫婦にして上げたいよ」
 新「およしな、そんな詰らぬ事を、仕様がないな、本当にお前も分らないね、お久さんだって一人娘で、婿を取ろうと云
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