此家《こゝ》へ稽古に参りまする娘が一人ありまして、名をお久《ひさ》と云って、総門口《そうもんぐち》の小間物屋の娘でございます。羽生屋三五郎《はにゅうやさんごろう》と云う田舎|堅気《かたぎ》の家《うち》でございまするが、母親が死んで、継母《まゝはゝ》に育てられているから、娘は家《うち》に居るより師匠の処に居る方がいゝと云うので、能《よ》く精出して稽古に参ります。すると隠す事程|結句《けっく》は自然と人に知れるもので、何《ど》うも訝《おか》しい様子だが、新吉と師匠と訳がありゃアしないかと云う噂が立つと、堅気の家《うち》では、其の様な師匠では娘の為にならんと云って、好《い》い弟子はばら/\下《さが》ってしまい、追々お座敷も無くなります。そうすると、張子連は憤《おこ》り出して、
「分らねえじゃアねえか、師匠は何《なん》の事だ、新吉などと云う青二歳を、了簡違いな、また新吉の野郎もいやに亭主ぶりやアがって、銜煙管《くわえぎせる》でもってハイお出で、なんと云ってやがる、本当に呆れけえらア、下《さが》れ/\」
 と。ばら/\張子連は下ります。其の他《た》の弟子も追々其の事を聞いて下りますと、詰《つま》
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