るものでございません。
十六
日頃堅いと云う評判の豐志賀が、どう云う悪縁か新吉と同衾をしてから、不図《ふと》深い中になりましたが、三十九歳になる者が、二十一歳になる若い男と訳があって見ると、息子のような、亭主のような、情夫《いろおとこ》の様な、弟の様な情が合併して、さあ新吉が段々かわいゝから、無茶苦茶新吉へ自分の着物を直して着せたり何か致します、もと食客《いそうろう》だから新吉が先へ起きて飯拵《めしごしら》えをしましたが、此の頃は豐志賀が先へ起きてお飯《まんま》を炊くようになり、枕元で一服つけて
豐[#「豐」は底本では「新」]「さア一服お上《あが》りよ」
新「ヘエ有難う」
豐「何《なん》だよヘエなんて、もうお起きよ」
新「あいよ」
などと追々増長して、師匠の布子《どてら》を着て大胡坐《おおあぐら》をかいて、師匠が楊枝箱《ようじばこ》をあてがうと坐ってゝ楊枝を遣《つか》い嗽《うがい》をするなどと、どんな紙屑買が見ても情夫《いゝひと》としか見えません。誠に中よく致し、新吉も別に行《ゆ》く処も無い事でございますから、少し年をとった女房を持った心持でいましたが、
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