、貴方鰻を召上りますなら鰻でも」
 新「鰻は結構、私が代を出すから何《どう》か買って貰いたい」
 春「そんなら跡を願いますよ」
 と是からガラリ障子を明けて戸外《そと》へ出ました。すると此の女房は、実は深見新五郎が来たら是々と、亭主に言付けられているから、亭主の行って居る処へ行って話をする。此の亭主は石河伴作《いしかわばんさく》と云う旦那|衆《しゅ》の手先で、森田の金太郎と云う捕者の上手、かねて網を張って待っていた処だから、それは丁度|好《い》いと、それ/″\手配《てくばり》をしたが、併《しか》し剣客者《てしゃ》と聞いているから刃物を取上げなければならんが、何《ど》うしたものだろうと云うと女房が聞いて、刃物は是々してちゃんと箪笥の抽斗へ入れて錠を卸して仕舞って、鰻を誂《あつら》えに行《ゆ》くつもりにして来たと云う。
 金「そんなら宜しい」
 と云って直《すぐ》に鰻屋の半纏《はんてん》を引掛《ひっか》けて若者の姿で金太郎が遣《や》って来て、
 金「エヽ鰻屋でございます」
 と云うと、此方《こちら》は気が附きませんから、
 新「ハイ大きに御苦労」
 金「お誂えが出来ました、あゝ山椒《さんし
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