五郎であるが、仔細あって暫く遠方へ参って居たが、今度此方へ出て参っても何処《どこ》と云って頼る処も無し、何処か知れぬ処へ奉公住《ほうこうずみ》を致したいが、請人《うけにん》がなければならんから当家で世話をして請人になってくれんか」
春「お世話どころじゃアございません、是非ともお世話を為《し》なければ済みません、まア能く入らっしゃいました、貴方それじゃアまア脚半や草鞋をお取りなすって、なに御心配はございません、今水を汲んで来ます、ナニその汚れた処は雑巾で拭きますから、まア合羽などはお取りなさいまし」
と云うから新五郎はホット息を吐《つ》きます。すると、
春「まア此方《こちら》へ」
と云うので何か親切に手当を致し、大小は風呂敷に包み箪笥《たんす》の抽斗《ひきだし》へ入れてピンと錠を卸《おろ》し、
春「貴方これとお着かえなさいましな」
新「イヤ着換は持って居るから」
と包の中から出して着物を着かえ、
新「何うか空腹であるから御飯を」
春「ハイ宜しゅうございます、貴方御酒を召上るならば取って参りましょう、此の辺は田舎同様場末でございますから何《なん》にもよいものはありませんが
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