如く小田原提灯が見えて、紺足袋《こんたび》に雪駄穿《せったばき》で捕者《とりもの》の様子だから、あわてゝ其処《そこ》にある荒物屋の店の障子をがらりと明けて、飛上ったから、荒物屋さんでは驚きました。
女房「何ですねえ、恟《びっく》りしますね」
と云うと、
新「ハイ/\/\」
と云ってブル/\慄《ふる》えながら、ぴったり後《うしろ》を締めて障子の破れから戸外《そと》を覗《のぞ》いて居ります。
十三
女「まア何処《どこ》の方です、突然《いきなり》人の家《うち》へ這入って、草鞋をはいたなりで坐ってサ、何《ど》うしたんだえ」
新「是は/\何うも誠に相済まぬが、今間違で詰らぬ奴に喧嘩を仕掛けられ、私は田舎|武士《ざむらい》で様子が知れぬから、面倒と思って、逃ると追掛《おっか》けたから、是は堪《たま》らんと思って当家へ駈込みお店を荒して済みませんが、今覗いて見れば追掛けたのではない酒屋の御用が犬を嗾《けし》かけたのだ、私は只怖いと思ったものだから追掛けられたと心得たので、誠に相済みません」
女「困りますね、草鞋を脱いで下さい、泥だらけになって仕様がございませんね、ア
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