けて、怖ろしい刃物のあるを知らずにお前を此所《こゝ》へ押倒して殺してしまったから、もう私は生きてはいられない、お園どん確《しっ》かりしておくれ、私が死んでもお前を助けるから」
と無理に抱起《だきおこ》して見ましたが、もう事が切れて居る。
新「ハア、もう是は迚《とて》もいかぬな」
と夢の覚めた様な心持で只茫然として居りましたが、もう迚も此処《こゝ》の家《うち》には居られぬ、といって今更|何処《どこ》といって行《ゆ》く処も無い新五郎、エヽ毒喰わば皿まで舐《ねぶ》れ、もう是までというので、屎《くそ》やけになる。若い中《うち》にはあることで、新五郎は暗《やみ》に紛れてこっそり店へ這入って、此の家《うち》へ来る時差して来た大小を取出し、店に有合《ありあわせ》の百金を盗み取って逐電いたしましたが、さて行《ゆ》く処がないから、遥々《はる/″\》奥州《おうしゅう》の仙台へ参り、仙台様のお抱《かゝえ》になって居る、剣客者《けんかくしゃ》黒坂一齋と云う、元剣術の指南を受けた師匠の処へ参って塾に這入り、剣術の修業《しゅうぎょう》をして身を潜めて居りましたが、城中に居りましたから、頓《とん》と跡が付きま
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