いから」
 園「アラおよしよ」
 新「お前こんなに思って居るのに」
 と夢中になりお園の手を取ってグッと引寄せる。
 園「アレお止し」
 と云ううち帯を取って後《うしろ》へ引倒しますから、
 園「アレ新どんが」
 と高声《たかごえ》を出して人を呼ぼうと思ったが、そこは病気の時に看病を受けました事があるから、其の親切に羈《ほだ》されて、若《も》し私が呶鳴《どな》れば御主人に知れて、此の人が追出されたら何処《どこ》へも行《ゆ》く処も無し気の毒と思いますから、唯小声で、
 園「新どんお止しよ/\」
 と声を出すようで出さぬが、声を立てられてはならんと、袂《たもと》を口に当てがって、
 新「此方《こっち》へお出で」
 と藁の上へ押倒して上へ乗掛《のりかゝ》るから、
 園「アレ新どん、お前気違じみた、お前も私もしくじったら何《ど》うなさる、新どん、新どん」
 ともがくのを、無理無体に口を押え、夢中になって上へ乗掛ろうとすると、
 園「アレ新どん/\」
 ともがいているうちに、お園がウーンと身を慄《ふる》わして苦しみ、パッと息が止ったから恟《びっく》りして新五郎が見ると、今はどっぷり日が暮れた時で
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