「アラ、びっくりした、新どん、何《なん》でございます」
十二
新「アノお園さん、私はね、此の間お前と枕を並べて一度でも寝れば、死んでも宜《い》い、諦めますと云いました」
園「そんなことは存じませんよ」
新「存じませんと云ったって覚えてお居《い》でだろう、だがネ私はきっと諦めようと思って無理に頼んでお前の床へ這入って酔った紛れに一寸枕を並べたばかりだが、私はお前と一つ床の中へ這入ったから、猶《なお》諦めが付かなく成ったがね、お園どん、是程思って居るのだから唯《たった》一度ぐらいは云う事を聴いてもいゝじゃアないか」
園「何《なん》だネ新どん、気違じみて、お前さんも私も奉公して居る身の上でそんな事をして御主人に済みますか、其の事が知れたらお前さんは此の家《うち》を出ても行処《ゆきどころ》が無いじゃアありませんか、若《も》し間違があったならば、私は身寄も親類も無い行処の無いという事は何時《いつ》でも然《そ》う云っておいでだのに、大恩のある御主人に済みませんよ」
新「済まないのは知って居るが、唯《たった》一度で諦めて是ッ切り猥《いや》らしい事は云う気遣《きづかい》な
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