に土蔵《くら》の塗直しが始まり、質屋さんでは土蔵を大事にあそばすので、土蔵の塗直しには冬が一番|持《もち》がいゝと云うので、職人が這入ってどし/\日の暮れるまで仕事をして、早出《はやで》居残りと云うのでございます。職人方が帰り際には台所で夕飯時《ゆうめしどき》には主人が飯を喫《た》べさせ、寒い時分の事だから葱鮪《ねぎま》などは上等で、或《あるい》は油揚に昆布などを入れたのがお商人《あきんど》衆の惣菜でございます。よく気をつけてくれまするから、台所で職人がどん/\這入って御膳を食べ、香の物がないといって、襷《たすき》を掛けて日の暮々《くれ/″\》にお園が物置へ香の物を出しにゆきました。此の奥に土蔵が有ってその土蔵の脇は物置があり、其の此方《こちら》には職人が這入って居るから荒木田《あらきだ》があり、其の脇には藁《わら》が切ってあり、藁などが散《ちら》ばっている間をうねって物置へ往って、今香の物を出そうとすると、新五郎が追っかけて来たから、見ると少し顔色も変って何だか気違《きちがい》じみて居る。もっとも惚れると云うと、馬鹿気《ばかげ》て見えるものでございますが、
新「お園どん/\」
園
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