いから」
宗「いゝえそうでは無い」
と云うと妹のお園が、
園「お父《とっ》さん早く帰っておくれ、本当に寒いから、遅いと心配だから」
宗「なに心配はない、お土産《みや》を買って来る」
と云って出ますると、所謂《いわゆる》虫が知らせると云うのか、宗悦の後影《うしろかげ》を見送ります。宗悦は前鼻緒《まえばなお》のゆるんだ下駄を穿《は》いてガラ/\出て参りまして、牛込の懇意の家《うち》へ一二軒寄って、すこし遅くはなりましたが、小日向|服部坂上《はっとりさかうえ》の深見新左衞門《ふかみしんざえもん》と申すお屋敷へ廻って参ります。この深見新左衞門というのは、小普請組《こぶしんぐみ》で、奉公人も少ない、至って貧乏なお屋敷で、殿様は毎日御酒ばかりあがって居るから、畳などは縁《へり》がズタ/\になって居《お》り、畳はたゞみ[#「み」に傍点]ばかりでたた[#「たた」に傍点]は無いような訳でございます。
宗「お頼み申します/\」
新「おい誰《たれ》か取次が有りますぜ、奥方、取次がありますよ」
奥「どうれ」
と云うので、奉公人が少ないから奥様が取次をなさる。
二
奥「お
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