や、よくお出でだ、さア上《あが》んな、久しくお出でゞなかったねえ」
宗「ヘエこれは奥様お出向いで恐れ入ります」
奥「さアお上り、丁度殿様もお在宅《いで》で、今御酒をあがってる、さア通りな、燈光《あかり》を出しても無駄だから手を取ろう、さア」
宗「これは恐入ります、何か足に引掛《ひっかゝ》りましたから一寸《ちょっと》」
奥「なにね畳がズタ/\になってるから足に引掛るのだよ……殿様宗悦が」
新「いや是は何《ど》うも珍らしい、よく来た、誠に久しく逢わなかったな、この寒いのによく尋ねてくれた」
宗「ヘエ殿様御機嫌|好《よ》う、誠に其の後《のち》は御無沙汰を致しましてございます、何うも追々|月迫《げっぱく》致しまして、お寒さが強うございますが何もお変りもございませんで、宗悦身に取りまして恐悦に存じます」
新「先頃は折角尋ねてくれた処が生憎《あいにく》不在で逢わなかったが何うも遠いからのう、なか/\尋ねるたって容易でない、よくそれでも心に掛けて尋ねてくれた、余り寒いから今一人で一杯始めて相手欲しやと思って居た処、遠慮は入らぬ、別懇《べっこん》の間ださア」
宗「ヘエ有難い事で、家内の
前へ
次へ
全520ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング