、けれども私を憫然《かわいそう》と思って、一晩お前の床の中へ寝かしておくんなさいよ、エお園どん」
 園「アラ厭《いや》なネ、私とお前さんと寝れば、人が色だと申します」
 新「イヽエ私もそれが知れゝば失敗《しくじ》って此家《こゝ》には居られないから、唯|一寸《ちょっと》並んで寝るだけ、肌を一寸|触《ふれ》てすうっと出ればそれで断念《あきら》める、唯ごろッと寝て直ぐに出て行《ゆ》くから」
 園「そんな事を云ってごろりと寝て直ぐに出て行《い》くったって、仕様がないねえ、行って下さいよ」
 新「そんな事を云わずに」
 園「いやだよ、新どん」
 新「お願いだから」
 園「お願いだって」
 新「ごろり一寸寝るばかりだ、永らく寝る目も寝ずに看病したろうじゃアないか、其の義理にも一寸枕を並べて、直ぐに出て行《ゆ》くから」
 園「仕様がございませんね」
 と云うが、永らく看病してくれた義理があってみれば無下《むげ》に振払う事も出来ず、
 園「新どん唯一寸寝る許《ばか》りにしておくんなさいよ」
 新「アヽ一寸一度寝るばかりでも結構、半分でもよろしい」
 と云うのでお園の床へ這入りますると、お園は厭だからぐ
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