も退けましたから早くお出でなさいよ」
 新「そんなに追出さなくてもいゝやね、お園どん/\」
 園「何《なん》ですよ」
 新「だがお園どん、本当にお前さんは大病で、随分私は大変案じて一時《ひとっきり》は六ヶ《むずか》しかったから、私は夜も寝なかったよ」
 園「有難うございますが、そんなに恩にかけると折角の御親切も水の泡になりますから、余《あんま》り諄《くど》く仰しゃると、その位なら世話をして下さらんければいゝにと済まないが思いますよ」
 新「そう思っても私の方で勝手にしたのだからいゝが、ねえお園どん/\」
 園「何ですよ」
 新「私の心持はお前さん些《ちっ》とも分らぬのだね、お園どん、本当に私は間が悪いけれどもね、お前さんに私は本当に惚れて居ますよ」
 園「アラ、嫌《いや》な、あんな事をいうのだもの、お内儀《かみさん》に言告《いッつけ》ますよ」
 新「言告るたって……そんなことを云うもんじゃアない、お前は私が来ると出て行け/\と、泥坊猫みた様に追出すから、迚《とて》もどう想ってもむだだとは思うが、寝ても覚めてもお前の事は忘れられないが、もう是からは因果と思ってふッつり女部屋へは来ませんが
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