刀を投出して恐れ入るか、手前《てめえ》は力が強くても此れでは仕方があるめえ」
 と鼻の先へ飛道具を突き附けられ、花車はギョッとしたが、惣吉を後《うしろ》へ囲んで前へ彼《か》の杉の幹を立てたなりで、
 花「卑怯だ/\」
 と相撲取が一生懸命に呶鳴る声だから木霊《こだま》致してピーンと山間《やまあい》に響きました。
 花「手前《てめえ》も立派な侍じゃアねえか、斬り合うとも打合うともせえ、飛道具を持つとは卑怯だ、飛道具を置いて斬合うとも打合うともせえ」
 一角もうっかり引金を引く事が出来ませんから威《おど》しの為に花車の鼻の先へ覘《ねら》いを附けておりますから、何程力があっても仕様がありません、進むも退《ひ》くも出来ず、進退|谷《きわ》まって花車は只ウーン/\と呻《うな》っておりまする。多助は彼《か》の道恩を送っていきせき帰って来ましたが、此の体《てい》を見て驚きましてブル/\顫えております。すると天の助《たすけ》でございますか、時雨空《しぐれぞら》の癖として、今まで霽《は》れていたのが俄《にわ》かにドットと車軸を流すばかりの雨に成りました。そう致しますと生茂《おいしげ》った木葉《このは》に
前へ 次へ
全520ページ中517ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三遊亭 円朝 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング