まえ、とまず四人ばかり其処《そこ》へ出ましたが、怖いと見えまして、
 甲「尊公《そんこう》先へ出ろ」
 乙「尊公から先へ」
 丙「相撲取だから無闇にそういう訳にもいかない、中々油断がならない、尊公から先へ」
 丁「じゃア四人一緒に出よう」
 と四人|均《ひと》しく刀を抜きつれ切ってかゝる、花車は傍《かたわら》に在《あ》った手頃の杉の樹《き》を抱えて、総身《そうしん》に力を入れ、ウーンと揺《ゆす》りました、人間が一生懸命になる時は鉄門でも破ると申すことがございます。花車は手頃の杉の樹をモリ/\/\と拗《ねじ》り切って取直し、満面朱を灌《そゝ》ぎ、掴み殺さんず勢いにて、
 花「此の野郎ども」
 といいながら杉の幹を振上げた勇気に恐れ、皆近寄る事が出来ません。花車は力にまかせ杉の幹をビュウ/\振廻し、二人を叩き倒す、一人が逃げにかゝる処を飛込んで打倒《ぶちたお》し、一人が急いで林の中へ逃げ込みますから、跡を追って参ると、安田一角が野袴《のばかま》を穿き、長い大小を差し、長髪に撫で附け、片手に種ヶ島の短銃《たんづゝ》に火縄を巻き附けたのを持って、
 安「近寄れば撃ってしまうぞ、速《すみや》かに
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