でも向《むこう》を怨むには及ばん、貴様の親父を殺した新吉夫婦と母親《おふくろ》を殺したお熊比丘尼は永らく出家を遂げて改心したが、人を殺した悪事の報いは自滅するから討つがものは無い、己《おのれ》と死ぬものじゃから其の念を断つ処が出家の修行で、飽く迄も怨む執念を断《き》らんければいかん、それに貴様は幾歳《いくつ》じゃ、十二や十三の小坊主が、敵手《あいて》は剣術遣じゃないか、みす/\返り討になるは知れてある、出家を遂げれば其の返り討になる因縁を免《のが》れて、亡なられた両親やまた兄|嫂《あによめ》の菩提を吊うが死なれた人の為じゃ、え」
 宗「ハイ毎度方丈|様《さん》から御意見を伺っておりまするが、此の頃は毎晩/\兄《あに》さんや姉《あね》さんの夢ばかり見ております、昨夜《ゆうべ》も兄さんと姉さんが私の枕元へ来まして、新吉が敵の隠家《かくれが》を教えて知っているに、お前が斯《こ》う遣ってべん/″\と寺にいてはならん、兄さん姉さんも草葉の蔭で成仏する事が出来ないから敵を討って浮ばして呉れろと、あり/\と枕元へ来て申しました、実に夢とは思われません、してみると兄様《あにさん》や姉様《あねさん》も迷
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