恟《びっ》くり致しました。絶え/″\に成っていました新吉は血《のり》に染った手を突き、耳を欹《たっ》て聞いております。
 尼「私も種々《いろ/\》悪い事をした揚句、一度出家はしたが路銀に困っている処へ通り合せた親子連の旅人《りょじん》小金原の観音堂で病に苦しんで居る様子だから、此の宗觀|様《さん》をだまして薬を買いに遣った跡で、お母様《ふくろさん》を縊殺《くびりころ》したは此のお熊、私はお前|様《さん》のお母様《っかさん》の敵だから私の首を斬って下さい」
 と新吉が持っていました鎌を取って、お熊比丘尼は喉を掻切って相果てました。其の内村の者も参り、観音寺の和尚様も来て、何しろ捨《すて》ては置かれないと早速此の由《よし》を名主から代官へ訴え検死済の上、三人の死骸は観音堂の傍《わき》へ穴を掘って埋め、大きな墓標《はかじるし》を立てました。是が今世に残っておりまする因果塚で、此の血に染った鎌は藤心村の観音寺に納まりました。扨《さて》宗觀は敵の行方が知れた処から、還俗《げんぞく》して花車を頼み、敵討が仕度《した》いと和尚に無理頼みをして観音寺を出立するという、是から敵討に成ります。

    
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