は直《すぐ》に泣き出すだ、親孝行な事だが、出家になるのは其処《そこ》を諦める為だから泣くなと和尚様がよくいわっしゃるが、矢張《やっぱ》り直《じき》に泣くだが、併《しか》し泣くも無理はねえだ」
 新「へえ、それは何《ど》ういう因縁に成って居りますのです」
 音「ねえ宗觀|様《さん》、お前の父様は早く死んだっけ」
 宗「七年前の八月死にました」
 音「それから此の人の兄様《あにさん》が跡をとって村の名主役を勤めて居ると、其処《そこ》へ嫁子《よめっこ》が這入《へえ》って何《な》んともハヤ云い様のなえ程心も器量も善《い》い嫁子だったそうだが、其所《そこ》に安田八角か、え、一角とか云う剣術|遣《つけえ》が居て其の嫁子に惚れた処が、思う様にならねえもんだから、剣術遣の一角が恋の遺恨でもってからに此の人の兄さんをぶっ斬って逃げたとよ、其奴《そいつ》に同類が一人有って、何《な》んとか云ったのう、ウン富五郎か、其の野郎が共謀《ぐる》になって、殺したのだ、すると此の人の宅《うち》の嫁子が仮令《たとえ》何《な》んでも亭主の敵《かたき》い討《ぶ》たねえでは置かねえって、お武家《さむれえ》さんの娘だけにきかねえ
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